卒業生紹介

玉城尚子

2017年度 本科2年コース

Q1. アルスシムラに入学したきっかけは何ですか?

精神科医療に携わる中、大切なものを見失わないために、日常の中にもっと自然と触れる時間を持ちたいと感じていました。入学の前年、「母衣への回帰」展で会場を満たしていた「ひかり」に入学へ導かれたように思います。

Q2. あなたの「いま」を教えてください。

週の半分は精神科医療に、半分は染め織りに、、の予定でしたが、娘と共に続けているハワイアンフラの世界に没頭している日々です。身体を通した表現、レイや衣装の製作、材料となる植物の探求に今は力を注いでいます。

Q3. 在学中の学びの中で、「いま」に活きていることを教えてください。

染めたい、織りたい気持ちは心の中に抱きつつ、目の前にある仕事や活動に手いっぱいなまま三年が過ぎようとしています。改めてアルスシムラでの製作を振り返ってみると「本当に自分のしたことだろうか」という不思議な気持ちになります。ふくみ先生をはじめ、先生方が時間をかけて積み上げてこられたもの、京都嵯峨の場所や文化自然の力をお借りして製作が叶ったのだなと、今より強く感じます。
卒業後、沖縄での生活に戻り半年程経った頃に、夏の夕方の静かな海を眺めながら、やっと心も体もこの場所に帰ってきたという感覚とともにとても満ち足りた気持ちになった時がありました。
20代で沖縄に移り住み、精神科病院でさまざまな状況に置かれた人々と向き合う中で、自分がどう在ればよいのかともがき苦しんだ時期もありました。出会う人々のもつ激しく深い感情を自分の中にも認めつつ、その場所で生きる人々がもつ悲しみや苦しさや、そして美しさを、ほんの少しずつですが一緒にすくいあげる、今はそんな思いで続けています。
私たちの精神、魂は自由である一方で、特定の場所や土地との繋がりを得ることによって、時に苦しみを伴いつつも存在をより強く美しくする側面があるように思います。
その土地に育つ植物から色を頂き染めて織りあげる営みのなかに、生まれた場所やその土地に咲く花を讃え、そこに生きる神や想いを寄せる人を歌うフラの世界のなかに、同じ生命の循環を感じ、さらに深めていきたいと願う日々です。

Q4. これから染織を志す人にメッセージをお願いいたします。

アルスシムラに入学するにあたり、小学2年の娘と猫とともに嵯峨へ引っ越しました。新しい環境での生活に加え、沖縄に残してきた仕事もあり、行き来しながらの慌ただしい2年間でしたが、先生方、一緒に学んだ皆さん、地域の皆さんのあたたかさに助けられ、最後まで終えることができました。振り返ると無謀とも言える生活でしたが、強く心惹かれるものに手を伸ばし飛び込んでみることで、自分の思いを超えた出会いがあり、また次なるものに繋がっていけたように思います。
心を注いでデザインを考え、心躍らせながら糸を染め、無心に糸と向き合い、そして機にかかる糸を織りあげるまでの工程は、私の手の中にあり、私に属する布であるように感じていたものが、織り終え機から下ろすと、スっと自分から離れて違った存在に感じられる不思議も体験しました。
入学前、卒業後の道はさまざまながら、どんな形であれ、それぞれの内面に大きく響く時間になるかと思います。

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